最近日本でも、ハンドドラムやフレームドラムが知られて来たせいだろうか…以前に比べ、タールについての質問を受ける機会が多くなった。楽器店に並べてある打楽器群の中でも、取り分け単純な形状をしているので、つい見過ごしてしまいそうな太鼓だが、その独特な奏法から奏でられる不思議なサウンドは呪術的で面白い、探求すればその歴史は古く、知るほどに味わい深くなる楽器である。
これまでにも解説して来た事でもあるが、タールは、ダフやベンディールとは、別モノである。それぞれの発祥をあえて言うなら、タールはエジプト、ダフはペルシア、ベンディールはアラブ起源と言えるだろう。また同じリズムでも、それぞれの特性や奏法上*イデオム(言い回し表現)も異なる上に、タールの場合は、厳密性よりも*ループシーケンス(ひとつの楽想を反復すること)が重視される。計算機の世界に例えるなら、C言語に対するBASICと言ったところだろうか…どちらかと言えば少し原始的なドラム言語を使うところに特徴がある。さて、前置きがだいぶ長くなってしまったが、このリズムスクリプト入門では、既存のリズムを理解する上で、重要な「拍の原理」についての解説をしつつ、同時に中東・アフリカ起源のリズムについても触れてみたいと思う。
タールは、分子拍(リズムの最小基準単位)を組み合わせて、ひとつのグループを作り、これらの配列によって構成された手順を、D・E・C・Tの4種類の音を用いてDominaTonic(ドミナントトニック)を表現する。この核の部分となる分子拍は、短・長の拍の長さを*1.定義することによって生まれた2つの要素拍がある。これは単純な3拍と2拍の2つを指し。ex1.では、まだピッチ(音程・振動数)を持っていない段階での音、つまり「拍」そのものを表している。
ex1. ・
第一段階では、「拍」自体は、「・」の有無しかない。ここから律動を生じるには、連続した「・」を打たなければならないので、当然として「・・」と進行していくことになる。しかし実際の聴感上は、ただ「・」が連続しているように聞こえる。タールでは、これを「拍の定義」イス(*エスと発音しない:-)としている。イスは「空」ESと「有」IS(*表記上ESとISに分けてる。)の2つから成り、「拍」に律動を与える力を持っている。そして次の第ニ段階では、このイスによって「拍の長さ」が与えられ、最も初期的なドラミングが完成する。これは、形式のようなものは持たず、ある一定時間内を「等間隔に打つ連続した音」として認識されるものである。
ex2. ―
第三段階の、ex2.は、「・」で示された拍よりも「−」は長いことを意味するが、この状態では、その「長さ」を知ることはできない。そこで「・」と「−」を対比させ、拍の長さを対比によって感覚的に捉えようとする。このようにして一定時間に打たれる「拍の長さ」を意識的に可変すると律動は速緩を生じる結果となる。このことから「短」と「長」2種類の拍を理解することができる。
ex3. ・ ―
さらに第四段階として、2種類の「拍」を得たことにより、単調な律動に安定と不安定の部分が加わる。これには第一要素と第二要素があり、第一要素は、ex3.で示すように「・」「−」を一組にした初歩的な律動である。ここで仮に*1.の定義を用いて説明すると、短拍を「・」長拍を「−」とした場合は「−」はその2倍になるので、・+(・×2)=3拍となる。
ex4. ― ―
第二要素は、前段階で得られた第一要素の並列によって得られる2拍であるが、正確には4つの拍から成り立っている。
例えば、8拍子をカウントする場合は、* 3+3+2 拍 のように分子拍を組み合わせて発音し、ヒットコントラスト(音の対比)を付ける。しかしタールには、明確な打音のコントラスト(高・低音の定義)がないので、これらは 発音=打点 の違いで表現される。もっとも重要な音は、Dum:ドゥン(倍音を多く含んだ太い低音。以下Dに略記)であり、規定拍間の、Dを打つ回数とタイミングによってリズム形式は変化する。次に示される、E:イス Te:テ C:カ この3音は、ミュート(消音)した音で表現され、リズムに。そして第三に、Tk:ティク 高域倍音を多く含んでいるため、適宜、左右の指を使い分ける必要がある。